SBTi 、銀行と投資家のネット・ゼロ・コミットメントを設定・評価するための基準を開発中

企業のサステナビリティへの取り組みと気候変動への対処・抑制という世界的目標との整合性に焦点を当てた主要組織、Science Based Targets initiative(SBTi)は、4月12日、金融機関のネットゼロ目標の設定と評価のための基準確立を目的とした新しい報告書「金融セクターにおける科学ベースのネットゼロ目標設定の基盤」を発表しました。

2015年に設立されたSBTiは、CDP、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)の協力のもと、科学的根拠に基づく環境目標設定を標準的な企業行動として確立することを目的に創設されました。

昨年、SBTiは「ネット・ゼロ・スタンダード」を立ち上げ、ネット・ゼロ・エミッションの達成に向けた企業の取り組みを評価・認証する仕組みを策定しました。この新しい報告書は、このイニシアチブを基盤に、特に金融機関向けに基準を設定する予定です。金融機関向けネット・ゼロ・スタンダードの最終版は、2023年初頭に開始される見込みです。

金融機関向け気候変動基準の策定プロセスは、金融サービスセクターの企業がネット・ゼロ目標に取り組む動きが活発化している中で行われました。11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会合において、グラスゴー・ネットゼロ金融連合(GFANZ)は、世界のネットゼロ目標に賛同する金融セクター企業の資本が130兆ドル以上に達し、世界の金融資産の約40%を占めることを明らかにしました。

しかし、報告によると金融機関におけるネット・ゼロ目標が増加する一方で、その定義や誓約に含まれる活動が大きく異なり、目標の評価や現実のインパクトの比較・測定が困難になっており、今回の報告書では、誓約の対象となるサービスの範囲、目標達成のための緩和策や戦略、スコープ3排出量の包含・除外などの違いが強調されています。この報告書は、「金融機関にとってネット・ゼロが何を意味するのかについての共通理解を深めることは急務であり、目標が社会の気候変動や持続可能性の目標に沿っているか、また地球レベルでネット・ゼロ排出を達成するために必要な共通事項を確認する 」ことを目的としています。

SBTi最高経営責任者のLuiz Fernando do Amaral博士は、次のように述べています。

「金融機関は、投資や融資活動を通じて実経済の排出削減を推進するという重要な役割を担っています。この責任を受け入れつつある兆しがあります。科学的根拠に基づく短期的な目標に対しては、すでに即時的な行動が可能になっています。しかし、ネット・ゼロに関しては、それが金融業界にとって何を意味するのか、ほとんど理解されていないのが現状です。私たちの報告書は、これまで切実に必要とされてきた明確さを提供し、ネット・ゼロの誓約が科学的根拠に基づく行動を実現するのを助け、金融機関向けのネット・ゼロ基準を設定することを可能にします。
本報告書は、金融機関がネット・ゼロに到達するために満たすべき2つの主要な条件を示しています。すなわち、すべての融資を温暖化を1.5度に抑える経路と一致させること、および大気から同量のCO2を永久的に除去する活動への融資を通じて残留排出を中和すること。また、オフセットやカーボンクレジットの利用、化石燃料の段階的な廃止アプローチなど、セクターの問題についても言及しています。」

SBTiのマネージングディレクター兼共同設立者であるAlberto Carrillo Pineda氏は、次のように述べています。

「昨年、気候科学に沿った企業のネットゼロ目標設定に向け世界初のフレームワークを発表したSBTiは、世界の排出削減において金融機関が果たす独自の役割を生かし、同様の基準を作成する必要性を理解しています。すでに900社以上の企業が、科学的根拠に基づくネットゼロ目標の設定に取り組んでいます。SBTiの金融機関向けネットゼロ基準はこの目標設定を明確にし、金融セクターにおける勢いは、実体経済における科学的根拠に基づく脱炭素化にきっとつながるでことしょう。」

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