BCG/INSEAD取締役会調査、半数近くの取締役がESG監視のためのツールを欠く

コンサルティング及びアドバイザリー会社のボストン・コンサルティング・グループ(BCG)とビジネススクールを牽引するINSEADは、企業の取締役会がESGの監督に果たす役割について調査した「The BCG-INSEAD Board ESG Pulse Check」を発表しました。本報告書では、急速に発展しつつあるこの分野のアプローチはまだ発展途上であり、取締役はサステナビリティのトピックに優先順位をつけ、焦点を当てる必要性を認識している一方で、ほとんどの取締役がESGを戦略に統合することに高い効果を感じていないと報告しており、多くの取締役がESGの監督ツールを欠いていることが明らかになりました。

本報告書は、BCGとINSEADが複数年にわたり先手を切り、ESGの監督において取締役会が果たす役割を研究するため、パルスチェック調査とインタビュー調査を実施した結果、作成されたものです。調査には、平均7年の取締役経験を持ち、平均2つの取締役会に所属する120人以上の回答者からの回答が含まれています。回答者は、ヨーロッパ、アジア太平洋、アメリカなど複数の地域にまたがっており、企業規模も幅広く、半数以上が売上高10億ドル未満、11%が100億ドル以上となっています。

BCGとINSEADによると、この調査では、取締役会は、ESGの問題が会社の業績や価値にとって重要であることを認識しており、また、新興でダイナミックなESGの状況によって組織が競争における優位性を構築する機会がますます増えているため、取締役会の議題としてより高い位置に移動していることが判明しました。また、ステークホルダーも取締役会レベルにおけるESG意識の向上を促しており、約4分の3の取締役がESGに関する株主とのエンゲージメントが強まったと報告し、約3分の2が次の年次総会で機関投資家がESG関連の提案を行うことを期待しており、さらに半分以上がESGに関する懸念として規制当局、顧客、従業員を挙げています。

ESGへの関心が高まっているにもかかわらず、多くの回答者は、取締役会が効果的なESGの監督に必要なツールを欠いていることが多いと指摘し、約70%の取締役がESGを会社の戦略やガバナンスに統合することが中程度または全く効果的ではないと報告しています。同様に、90%以上の取締役が、企業戦略をESGと整合させるための適切な取締役会アプローチとして「戦略的考察」を挙げていますが、その役割を効果的に果たしていると回答したのは半数以下でした。

レポートの共同執筆者であるBCG常務取締役兼シニア・パートナーのDavid Young氏は、次のように述べています。

「取締役は、自分が監督する企業が野心的なESG目標を達成できるかどうかについて、大きな懐疑的な見方をしています。そのため、取締役会がESG課題のガバナンスを強化し、真に重要で、企業の利益や価値創造につながる事項に焦点を当てることがこれまで以上に重要になっています。」と述べています。

取締役会によるESGの効果的な監督を阻む、主な障害を特定するよう求められた取締役の回答のトップは「知識、データ、能力の不足」となり、44%の回答者が挙げています。その他の上位回答は、複雑さと曖昧さの管理(43%)、取締役会のコミットメントの欠如(30%)、アイデアを行動に移せない(26%)でした。企業のESG目標達成に対する主な脅威としては、「組織の実行能力」が43%でトップ、次いで「コストの上昇」「組織文化」「経営陣のコミットメント」が挙げられ、それぞれ30%以上の回答者が回答しています。

BCGのシニアアドバイザーであり、INSEADコーポレート・ガバナンス・センター
の所長で、レポートの共著者であるRon Soonieus氏は、次のように述べています。

「取締役会がESGに関して、コンプライアンス的な考え方から、真の戦略的なレンズを持って取り組むことは非常に重要です。しかし、多くの取締役会は、そのような重要な戦略的思考のための時間を確保するために、取締役会のアジェンダをまだ作り直していない。」

また、本調査では、ESGの懸念事項のトップとして複数のセクターの取締役会が挙げた、気候関連問題の管理・監督についても深く考察しています。回答者の42%は、自社がネットゼロを公約していると答えましたが、その目標を達成するための計画を公表しているのは半数強にすぎず、財務諸表に気候変動の影響を含めているのはさらに少数でした。

レポートの共同執筆者であるINSEAD コーポレート・ガバナンス・センターの常務取締役、Sonia Tatar氏は次のように述べています。

「ますます多くの企業が、ネットゼロを公約に掲げています。取締役は、社会と環境にとってより大きな利益をもたらす持続可能な経済的パフォーマンスのために企業を管理するため、これらの誓約に具体的な計画と実行を伴わせるという重要な役割を担っているのです。」

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