国際財務報告基準機構（IFRS）は、国際サステナビリティ基準審議会（ISSB）が提案する企業のサステナビリティと気候関連の開示に関する基準の最初の公開草案を3月31日発表しました。
この新基準は、サステナビリティ情報開示の包括的なグローバル・ベースラインを形成することにより、企業によるより包括的で一貫したサステナビリティ情報に対する世界の資本市場のニーズに応えることを目的としています。草案は、サステナビリティ関連財務情報が企業の財務諸表とともに報告されることを想定しており、企業はサステナビリティ関連財務情報が財務諸表の情報とどのように関連しているかを開示することを要求されることになります。
ISSBは、国際機関や各国司法当局と緊密に連携し、この基準が各国司法当局の要求事項に組み込まれることを支援すると表明しています。
草案は、気候関連財務情報開示タスクフォース（TCFD）の勧告に基づいており、また、最近IFRSに統合されたSASBの業界ベースの報告要件も取り込んでいます。ISSBは、別の発表で、SASBの基準を基に、業界ベースの基準開発アプローチを自らの基準開発プロセスに組み込む計画の概要を説明しています。
新たに公表されたのは、「公開草案 IFRS S1 サステナビリティ関連財務情報の開示に関する一般要求事項」 と 「公開草案 IFRS S2 気候関連情報開示 」です。
IFRS S1は、企業に対するサステナビリティ関連財務情報の報告要件を定めています。本草案は、企業価値の評価に重要な場合、人々、地球、経済への影響と依存に関する情報を含む、サステナビリティに関連するすべての重要なリスクと機会へのエクスポージャーに関する重要な情報を開示することを企業に要求するものです。この基準で要求される情報開示には、サステナビリティのリスクと機会を監視・管理するための企業のガバナンスプロセス、これらのリスクの企業全体のリスク管理プロセスへの統合、重要なサステナビリティ関連のリスクと機会に対する企業の戦略、企業がこれらのリスクと機会を測定・監視・管理する方法に関する情報（使用する指標と目標、目標に対する実績評価など）が投資家に理解できるようにするための情報が含まれます。
また、提案されている基準では、企業の供給、マーケティング、流通チャネルに沿った活動、リソース、関係性を含む、企業のバリューチェーン全体におけるサステナビリティ関連情報の開示も要求されています。
IFRS S2は、気候変動に関連する重要なリスクと機会が企業価値に与える影響を投資家が評価できるような重要な情報を開示することを企業に要求することになります。この提案は、IFRS S1と同様に、「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標」のアプローチをとっています。この基準で要求される情報には、気候変動リスクと機会を監視・管理するためのガバナンスプロセス、統制と手続き、気候変動がビジネスモデルや企業戦略、キャッシュフローに与える影響に関する情報、物理的な気候変動リスクと低炭素経済への移行リスクの特定が含まれることになるでしょう。また、企業は、気候関連の移行リスクや機会に対処するための計画（気候関連の目標を達成するための計画や、気候関連のバリューチェーンリスクに適応するための目標など）を報告することが要求される見込みです。
さらに、気候関連基準では、GHGプロトコルを用いて算出したスコープ1、2、3の情報を絶対的に開示することを企業に求めることになります。この要件は、SECが最近提案した気候変動情報開示規則を超えるもので、スコープ3の情報が重要である場合、または企業がスコープ3を含む排出量削減目標を表明している場合のみ要求するものです。ISSBは、「スコープ3排出量の情報開示要件は、企業のバリューチェーンに関連する情報を提供することの重要性を反映している」と述べています。
ISSBは、新しい草案に対する意見を収集するために120日間のコンサルテーションを開始し、今年末までに新しい基準を発行することを期待しています。
ISSBの議長であるEmmanuel Faber氏は、次のように述べています。
「政府、政策立案者、民間企業が共通の目的のために連携することは稀です。しかし、資本市場にとって、高品質でグローバルに比較可能なサステナビリティ情報が重要であるという点では、全員が同意しています。今回の提案は、どのような情報を、どこで、どのように開示すべきかを定義するものです。今こそ、この提案に参加し、コメントする時です。」
