米証券取引委員会 [U.S. Securities and Exchange Commission] (以降SEC)は2022年3月に気候変動問題などに対する企業のサステナビリティ情報の開示基準を定めた、「気候関連開示期提案」を公表し、意見の募集を開始している。投資家などからの要請が高まるサステナビリティ情報の開示は、IFRS財団なども、国際サステナビリティ基準審査議会(ISSB)の設置をして対応するなどしていることから、経団連は、SECの規則案公表は「時宜に適した取り組み」として評価し、高品質な国際基準の策定に期待を寄せている。一方で、今回の経団連のコメント発表にはESCの基本点に対して、規則案の変更要望や反対意見の提示など慎重的、否定的な姿勢が目立つ。
経団連は、開示内容について5つの点について意見を示している。1つ目はシナリオ分析における内容で、特定のシナリオの使用を要請するSECの規定に対し、各社の実態に応じた柔軟なシナリオの開示を許容することと、セーフハーバールールの適応を要望している。2つ目の気候変動に伴う財務的影響の注記について、経団連はこの決定を「時期尚早であり法的開示として求めるべきではない」としている。理由としては、長期的に変動する気候変動の影響は、わずかな前提の違いでも結果が大きく左右され、同一条件での他社比較が難しいことや、会計専門の監査人がビジネスに及ぼす環境問題の影響を評価することは困難としている。3つ目と4つ目はGHG排出量に関する開示である。これらの点は主に全登録企業がScope開示のための一般的な計測・収集のシステム構築と信頼性、網羅性の確立が先に必要であるという意見である。5つ目の指標・目標の開示については、義務付ける項目の最小限化を求めている。将来性の要素を含む場合があるこの点についてもセーフハーバールールを設けることを提示している。
保証における内容については、登録企業の負担の増加と、GHGのScope1.2についての保証もままならない現時点では時期尚早であるとしている。
SECが提示した適応時期は2023年だが、「現実的ではない」とする経団連は1年以上の準備期間が必要としている。