グローバルな資産運用会社であるアクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM)は、投資先企業に環境・社会問題を考慮するよう促すことを目的とした議決権行使方針の強化を発表しました。新方針の主な特徴として、十分な進捗が見られない気候変動対策に遅れをとる企業から撤退するためのタイムラインや、上級管理職のインセンティブ報酬をESGや気候の要素に合わせる要件などが挙げられます。
アクサIMは、2021年スチュワードシップ報告書の発表とともに、この新しい方針について説明し、過去1年間の同社のエンゲージメント、投票、スチュワードシップ活動並びに今後の計画や優先事項を強調しました。報告書によると、2021年のアクサIMのエンゲージメントでは気候問題が3分の1以上を占め、その他にもコーポレート・ガバナンス、人的資本、資源・生態系などの主要なエンゲージメント分野に重点を置き、1年間のエンゲージメントの80%が国連SDGsに関連するものであったといいます。
2022年、アクサIMは、気候、生物多様性、公正な移行、人権を含む優先的エンゲージメント分野を特定しました。
アクサIMの新しい方針では、気候変動対策に遅れをとっている企業に対して「three strikes and you’re out」ルールを導入し、ポートフォリオや気候変動の観点から重要と考えられる企業を中心に、3年間にわたり積極的に関与していくこととし、その後、特定の目標に到達しない場合は売却を行うとしています。
アクサIMの2022年議決権行使方針は、企業の給与方針におけるESG要素の統合も推進しており、役員報酬制度に対して持続可能な事業戦略に沿った「明白、関連、意味のある重要業績評価指標」を追加するよう企業に働きかけています。アクサIMは、気候変動問題にさらされている企業は、役員報酬を気候変動戦略の目標に沿ったものにしなければならず、また、短期、中期、長期の排出削減目標を含むネットゼロ戦略も必要とし、これらの要件を満たさない企業の経営者や取締役会長、CEOに反対票を投じることもあると表明しています。
エンゲージメント重視の姿勢を裏付けるように、アクサIMは最近、コーポレートガバナンス&スチュワードシップチームに、エロイーズ・クロー(Senior Corporate Governance and Stewardship Analyst)、アレクサンドル・プロスト(Senior Corporate Governance and Stewardship Analyst)、コンスタンス・カイエ(Corporate Governance and Stewardship Analyst)といった一連の人事を発表しています。
アクサIMのエグゼクティブ・チェアマン、マルコ・モレリは、次のように述べています。
「スチュワードシップは、変化をもたらすための主要なツールの一つであり、エンゲージメントは、責任ある投資家として牽引する当社のアプローチの最前線にあるものです。2021年は極めて重要な年であり、様々な重要課題について何百もの企業と有意義な対話を行い、また、2050年までにネットゼロを達成するための行動が遅すぎる企業や、信頼できる計画を持たない企業に対して明確なレッドラインを設定するための厳格なポリシーの導入を行いました。すでに今年、2022年には、取締役会が明確なESGコミットメントと目標を採用することを奨励する新しい議決権行使方針や、気候変動に遅れている企業に対する「three strikes and you’re out」エスカレーション方針の導入など、このアプローチを継続しています。」