概要
住宅設備の商品を開発するTOTOは、トイレや浴槽など、水回りの土石製品を中心に提供し、すべての人の生活文化の向上に貢献することを会社の経営理念としている。「きれいと快適」、「環境」に配慮した商品の実現を通じて、事業自体が「安全な水とトイレを世界中に」というSDGsの達成目標の一つに直結する会社である。TOTOは、グローバルで取り組む3つのテーマをマテリアリティとし、重要な社会課題の解決と経済成長から企業価値の向上と持続可能開発目標の達成にも貢献する取り組みを行なっている。これら3つのテーマは、「きれいと快適」、「環境」、そして「人とのつながり」である。このマテリアリティをもとに定めた2030年までの成長戦略を新共通価値創造戦略「TOTO WILL 2030」とし、きれいで快適・健康な暮らしの実現と社会・地球環境への貢献に取り組む姿勢を示している。さらに長期的な目標として、2050年には経営とCSRをESGの視点で一体化させることで、カーボンニュートラルで持続可能な社会、すべての人にとって快適で健康な暮らしの実現を目指している。
環境 (Environment)
CSR委員会をベースに、TOTOはESG経営それぞれに役割を担う部会を定めている。環境面では、主に商品サービス部会、エネルギー対策部会、包装・物流環境部会、廃棄物部会の4つが設置されている。環境面においてTOTOは、将来あるべき姿として、水資源を次世代につなげること、地球との共生による温暖化対策、地域社会での市民活動を目標に様々な取り組みを行なっている。
トイレや浴室の住宅設備においてTOTOは、独自の技術を生かして節水性能の進化に貢献した。例えば、水洗便器の水量は今まで一回あたり13Lだったものを、2012年にはすでに3.8Lにまで削減し、世界の洗浄水量規制に先立ち、4.8L便器をグローバルスタンダードと位置づけそれの普及による環境貢献を目指している。また、物づくりの要となる工場でも、排水を再利用したり、化学物質を含む水もフィルターなどを通して浄化させ、下水へ流したり、セメントの原料に再利用したりしている。
『TOTO水環境基金』
TOTOは企業として果たすべき自らの役割である節水技術の追求とともに、地域の事情を理解し支える地域団体の環境活動を支援する取り組みを導入することで、周りの人々やパートナーと協力して持続可能な世界の実現を目指している。この一環として、2005年にTOTO水環境基金を立ち上げ、水環境に関わる地域課題の解決を試みる団体に対して、継続的な物資や資金の支援を始めた。2009年には、国内を超えて、海外の取り組みにも支援の幅を広げた。これまでにのべ269団体の参加があり、助成総額は約3億6千万円。活動回数は、4745回となっている。2020年には、国内と国外で合わせて約120,000本もの植林に成功し、回収したゴミの量は、8.6トンにもなった。このシステムの導入により、TOTOグループと地域社会がともに関わり、持続的な世界の実現に一丸となって目指す意識の変革なども見られている。
社会 (Social)
TOTOが重要視するマテリアリティのテーマの一つである「人とのつながり」は、目指す姿を、ESGにおける社会面経営戦略につなげて考えられている。それらは、顧客との長期的で深い信頼関係の構築や、次世代のための取り組み、社員の働き方や、ウェルビーイングに対する改革の推進などがある。ステークホルダーエンゲージメントについては、顧客から調達先、株主などのありとあらゆるアクターと対話を重ね、透明で公平なやりとりを目指している。さらに、に対しても、働きやすい職場環境を目指し、労使間の対話を取り入れ、人権に対する仕組みの強化などを行い、ダイバーシティやワークライフバランスを大切にした人財マネジメントを推進している。
『ユニバーサルデザイン』
TOTOは、すべての人にとって使いやすく、快適さを求められる商品のデザイン作成に力を入れている。毎日使う商品の開発のプロセスでは、日常生活での“気づき”を大切にし、実際に利用者に商品を試してもらう「検証」や「訪問調査」を行なっている。様々な人にとって使いやすいデザインとなるユニバーサルデザインは、5つの原則に剃って考えられている。まずは、体の動き、姿勢などの楽さ、また操作方法の簡略化、使用環境に適応した心地よさ、選択肢の提供、そして安全配慮である。2006年には、日々の生活に密着したものづくりを極めるために神奈川県にユニバーサルデザイン研究所を設立し、年代、身体状況、家族構成やライフスタイルに合わせた商品開発と提案を行っている。
ガバナンス (Governance)
TOTOグループが考える企業経営の要は、「経営の客観性・透明性を高め、経営責任を明確にすることによって、ステークホルダーの皆様の満足を実現し、企業価値を永続的に向上させること」とされており、経営判断事項における意思決定機関とその方法などの公平、公正な仕組みの体系化を重要視する。そのために、監査役会設置会社の枠組みをもとに指名委員会等設置会社の機能を統合した体制をとっている。
『社外取締役員の声』
代表取締役員と9名の取締役、社会取締役を含めた13名のうち、独立的な立場である社外取締役のメッセージからはグローバル企業として、変わりゆく社会情勢と未来の架け橋となるような経営理念についてうかがえる。日本では当たり前であるトイレの存在を、国を超えた市場へ普及させることはもちろん、きれいで快適、かつ環境にも良い商品開発を、グローマルな人財で、ダイバーシティに配慮した陣営でめざしていく姿勢が見える。また、コロナウイルスが流行しているパンデミックの最中でも本部と現地の連動と有機的な動きが影響を最小限に抑えた。
取締役会についての言及では、組織の良好な機能に言及する一方で、海外での成長とオペレーションに対する「攻めのガバナンス」について、コアの文化を守りながらも、さらにスピード感を持ったチェレンジ風土の促進を課題としている。