概要
日本電気株式会社 (NEC)は、「誰もが人間性を発揮できる持続的な社会の実現」に向けて、様々なステークホルダーと協力しながらサステナビリティー経営に尽力している。
2021年度には、2025年の中長期計画の策定に先駆け、今から10年後の2030年に人間社会の 営みのベースとなる地球環境、人々の生活を支える社会、一人ひとりの Well-beingな暮らしという3つのレイヤーを基に「NEC 2030VISION」をまとめた。NEC 2030VISONのマイルストーンとなる「2025年中長期経営計画」においては、事業・財務戦略および企業文化改革の実践をとおして、安全・安心・公平・効率という社会価値の創造を図っている。そしてこの中長期計画で取り組む最も重要課題として、NECはE(環境面)「気候変動に対応する脱炭素社会の実現」S(社会面)「セキュリティ・AIと人権・多様な人材」そしてG(ガバナンス面)「コーポレートガバナンス・サプライチェーンサステナビリティ・コンプライアンス」をあげている。
環境 (Environment)
NECのESG経営の環境面における取り組みは、気候変動の解決に向けた脱炭素社会の実現が重点的に行われている。具体的な目標として、同グループは2050年までに実質的な二酸化炭素の排出量をゼロにするとしている。2016年にNECは気候変動対策を核として策定した長期の環境経営目標である「NECグループ環境経営行動計画2020/2030」を策定し、グループ一丸となって製品のエネルギー向上やモバイルインフラ装置の導入により2020年度の目標は全て達成し、2030年の環境経営目標「NEC環境ターゲット2030」に向けても、再生可能エネルギーのさらなる利用により、目標達成に向けた努力がなされている。
NECの具体的な取り組みとしては、今後さらに悪化するとされる気候変動の影響による洪水などに備えるため、住民の安全確保に活用できる「河川水位IoT監視システム」を開発し、地方自治体に情報提供をすることで防災計画や緊急対応の準備情報への活躍につながっている。廃棄物の削減や汚染の防止を図るため、NECではWi-Fiルータやセキュリティ機器などを含むホームゲートウェイ製品をレンタルし、返却された部品の廃棄物削減や、再生資源の有効活用をしている。また、生物の多様性を保護するために、NEC我孫子事業場の敷地内では、利根川が派生してできたと考えられる湧水池における、絶滅危惧種であるトンボの保全活動を手賀沼水生生物研究会と協働して行なっている。
『水リスクに関する対策』
人口増加や、気候変動による世界各地での水不足のリスクが懸念される中、NECは環境関連法規制を遵守し、水利用量の削減や環境負荷の低減に努めるとともに、水不足、水質汚濁、洪水などの水リスク管理を行なっている。2020年には、生産拠点を中心に国内外26拠点へ調査し、河川氾濫による浸水と断水による水リスクを特定した。これを受け、水量モニタリングや、水質の調査を実施し、いち早く問題の改善を行っている。NEC製品の生産拠点であるNECプラットフォームズ タイ社は、同社の水調査において利用可能な水量の逼迫が見られる、「水ストレス地域」に当てはまった。そのため、同社では、3つの貯蔵タンクを設置し、緊急事態の時には、地元州政府や工業地帯団体と協力して連携した対応を取れる準備をしている。
社会 (Social)
NECグループのESG経営における社会面での取り組みは、多岐にわたる。従業員の様々な背景や、価値観を尊重しイノベーションの創出を図るインクルージョン&ダイバーシティや、人への投資として挑戦する姿勢を支援する従業員の人材育成、育児休暇などの仕事と私生活のバランスを取れるようにする多様な働き方改革、そして、情報などを取り扱う同社が注意するのは、個人情報や人権、プライバシーの保護である。
グローバルな人材をはじめ、NECは多様な人材を育成していくことで、「一人ひとりの違いを強みに変え、変化にしなやかに対応し、強く勝ち続ける組織づくりとカルチャーの変革」を進めている。同社は2025年までに達成させる目標を設定しているが、女性や外国人雇用率の数値は、現状から革新的な変化が必要となっている。同社はまた、個人の一人ひとりの自由な発想と高い生産性を確立するため、コアタイムを廃止したスーパーフレックスタイムや、ドレスコードフリーの推進なども行っている。また、上司・部下の双方向の対話をベースとした評価育成の仕組みを導入することで、一人ひとりの役割と目標のすりあわせをし、個人の成長とキャリアアップにつなげている。
『NEC Make-a-Difference Drive(MDD)
NECの地域社会貢献活動は、1999年から「できることから少しずつ / Think Globally, Act Locally」をスローガンとして社員のボランティア活動や地域企業市民活動などに積極的に参加している。活動のメインテーマは、福祉・ダイバーシティ、環境、教育・文化・スポーツである。日本では、子供食堂の活動へ参画、小学校のプログラミング必修化を踏まえてプログラミング教室の全国展開などを行っており、海外などでは、インドやタイの農業支援や、文化や仏教の保護を目的としたカチン活動などを行っている。また、インドでは貧困層の女性や少女が経済的および社会的に不安を抱えないようにするために、知識やスキル、自信等を得るためのさまざまな教育を支援している。
ガバナンス (Governance)
NECグループは、社会価値の継続的な創出と企業価値の最大化を図るため、コーポレートガバナンスの強化をしている。また基本方針として、「経営の透明性と健全性の確保」「スピードある意思決定と事業遂行の実現」「アカウンタビリティ(説明責任)の明確化」「迅速かつ適切で公平な情報開示」を基本方針として、その実現を目指している。
『コーポレート・ガバナンス体制』
NECグループは、監査役設置会社形態を採用し、監査役による監査、及び重要な業務執行の意思決定における社外取締役の助言を重要とし、執行役員制度を導入することで、取締役会から執行役員に対して業務執行に関する大幅な権限委譲を行っている。また取締役および監査役の人事ならびに取締役および執行役員の報酬等の透明性の向上のため、指名・報酬委員会を設置している。また、取締役会は職務経歴、専門分野、国際性、ジェンダー等の多様性を考慮した構成にすることによって広範な知見を得ている。