キリンホールディングス ESG経営

概要

1907年の創業以来、ビール事業の発展から発酵、バイオテクノロジーの活用による医療域、ヘルスサイエンス域と事業領域を広げているキリングループ。同グループの価値想像モデルは、「喜びをつなぐ世界」の創造にあり、消費者のいかなるステージにおけるQOL (クオリティーオブライフ)の工場に貢献する商品、サービスの提供により、社会課題の解決に取り組んでいる。社会課題に対する解決のため、キリングループは主に、「健康」「コミュニティ」「環境」の3つをマテリアリティとし、長期経営目標であるキリンビジョン2027(KV 2027)の目標達成を目指している。KV 2027において、グループは食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業になることを目指しており、中長期目標として、既存飲料事業の選択と集中による収益強化の実現と、ヘルスサイエンスの強化によって健康に貢献する飲料企業への変革を定めた。

環境 (Environment)

キリングループは、2050年までの環境における長期戦略として2020年に「キリングループ環境ビジョン2050」を策定した。従来の環境ビジョンを見直し、社会と企業のレジリエンス強化を見据えた活動の一環であり、ネガティブインパクトの最小限化を超え、ステークホルダーの協働による、自然と人へのポジティブな影響を創出することで社会と地球の持続性を保つ取り組みをしている。実現に向けた取り組みは、主に「生物資源」「水資源」「容器包装」「気候変動」に焦点を当てている。生物資源においては、地球温暖化や生物多様性の環境課題に即した減量生産を促進。また、製品廃棄、再資源化による、生物資源や水資源の排気量、使用量を削減する取り組みを行なっている。さらに、キリングループの強みである、研究開発力とエンジニアリング力の活用により、持続可能なパッケージ開発やリサイクルインフラを導入するとともに、CO2ネットゼロに向け、自社使用エネルギーの100%再生可能エネルギー化を目指している。

『スリランカと午後の紅茶』

1986年に初めてペットボトル入りの紅茶として発売された「午後の紅茶」は、約35年に渡って、スリランカの茶葉を使用することで、キリングループにおける上質な紅茶作りと、スリランカ紅茶農園の収益増加というwin-winの関係作りを築いてきた。ウバ茶はスリランカが原産であり、パッケージに生産地の名前を入れることで、認知度の促進と、産地のブランド価値の創造に貢献した。また、二らいの紅茶農園を担う子供達の教育を支援するため、2007年から、スリランカ各地の小学校で「キリンライブラリー」の設立がされ、良質な図書の寄付が始まった。そして、生産地での、生物多様性の保全を促進し、持続可能性を追求すべく、現地紅茶農園に対する、レインフォレスト・アライアンス認証取得支援』を行うことで、持続可能な農地を築くための必要なトレーニング費用をキリングループが負担する活動をしている。2020年時点では、93農園が取得に成功し、現在は、789農園がトレーニングを行なっており、2025年位は、10,000の小農園が取得する見込みである。

[出典:キリンホールディングス HP スリランカと歩んだ35年。『午後の紅茶』が創造する持続可能な未来 より]

社会 (Social)

人とのつながり、コミュニティを大切に考えるキリングループは、商品・サービスを通じて、バリューチェーンでつながるすべての人を喜びでつながる社会を目指している。主な重要項目には、「人権の尊重」、「原料産地と事業展開地域におけるコミュニティの持続的発展」、「ウェルビーイング・信頼・笑顔のあるコミュニティの貢献」「食に関わる経済の活性化」があり、それぞれの課題解決と目標達成に向けた取り組みがされている。キリングループの人権課題の取り組みに関して、プライオリティとして12の項目を選定し、労働時間、賃金、労働安全衛生や差別・ハラスメントなどが取り上げられた。また、飲料事業が関わるコーヒーや紅茶、ぶどう農園などの抱える課題の解消や、キャパシティビルディングの支援を行う。また国内復興応援の活動として、午後ティーHAPPINESSプロジェクトも2021年に発足され、プロジェクト第一弾として、熊本県産のいちごティーの販売を通じて、売り上げの一部を復興の寄付金として贈呈された。

『日本産のホップを守る』

キリングループは、日本産のホップを使用し、日本ならではの特徴あるビールづくりとともに、生産地域の活性化を測っている。日本のホップ栽培状況は、近年の高齢化と後継者不足によって、最盛期に比べ生産量は深く落ち込み、将来日本産のホップの生存危機が危ぶまれている。これを踏まえて、キリングループは、将来を見据えながら様々なホップ生産地と協力して、ホップの魅力を発信しながらホップの持続的生産体制が確立された街づくりをしていく取り組みを始めた。その一環として遠野市と連携した「ビールの里構想」が挙げられる。2015年から毎年遠野市ではホップ収穫祭が8月に開催されるとともに、夏には、ホップ畑でホップの収穫を体験し、ホップにこだわったビールも楽しめる、1泊2日の「ビアーツーリズム」も開催している。

[出典:キリンホールディングス 社会との価値共創 コミュニティ より]

ガバナンス (Governance)

[出典:キリンホールディングス HP コーポレートガバナンス より]

キリングループのガバナンス体制は、酒類、飲料、医薬を中心とした多様かつグローバルな事業展開をする上で、全体戦略の策定と推進、各事業のモニタリングやグループ連携を包括する純粋持株会社制を採用している。また、すべてのステークホルダーにとって透明性の高いガバナンス体制を築くため、監査役会設置会社として、複数の社外取締役が社外監査役を複数含む監査役員と密に連携し、重要事項の最終決定を行うとともに、機動的な戦略実行を明確にするため、執行役員制度を設けている。

『社長の諮問機会』

社長の意思決定や、補佐をするため、キリングループは4つの社長諮問機会を設置している。これらは、「グループ経営戦略会議」「グループCSV委員会」「グループリスクコンプライアンス委員会」「情報開示委員会」であり、公平かつ、意思決定の質を高める取り組みがされている。また、グループ間の情報共有や、株主・投資家への有益な情報開示についても、経営の透明化を図る取り組みがされている。

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