花王グループ  ESG経営

概要

創業、1887年以来「人の暮らしを清潔に保つこと」を事業の核として発展してきた花王グループは、消費生活の方法などの外部変化に対応すべく、2021年から2025年までの中長期計画「K25」の策定をした。未来の命を守る企業として、”Sustainability as the only path”というビジョンを掲げ、「持続的社会に欠かせない企業になる」「投資して強くなる事業への変革」「社員活力の最大化」という3つの方針を2025年までの目標に掲げた。また、2030年までにSDGsの実現を見据え、上記の一つ目の目標に加え、「高社会貢献」「高収益グローバル企業」「ステークホルダーへの成長レベル還元」という3つの方針を設定した。

ESG戦略に関しては、「快適な暮らしを自分らしく送るために」「思いやりのある選択を社会のために」「より健やかな地球のために」を目指すMy Kirei Lifestyle というビジョンを掲げて革新と創造に挑んでいる。ESG経営の決意として環境の面では、「ゼロ浪費・カーボンゼロ」社会面では、「唯一無二のパーソナライズ」、ガバナンスでは「友(協業者)と正道を歩む」を掲げた。

環境 (Environment)

Kirei Lifestyleのうち「より健やかな地球のために」という方針にあるように、花王グループは、ESG経営の地球面で様々な取り組みを行なっている。花王のアクションとして挙げられているのは、脱炭素、ゴミゼロ、水保全、待機及び、水質汚染防止である。脱炭素に関しては、2040年までのカーボンゼロに加え、2050年までのカーボンネガティブの実現に向けて、原材料の低酸素化、高効率機器の導入再生可能エネルギーの使用、廃棄・リサイクルにおける取り組みを行なっている。洗剤の事業が特に強みである花王は、容器の詰め替えや付け替えの変換をすることで、プラスティックの削減に成功している。また、節水を心がける取り組みとして、洗濯における「すすぎ一回」を可能にした「アタックZERO」や、すすぎみずを20%削減できる食器用洗剤「キュキュット」などの商品開発を成功させた。また、レスポンシブル・ケア活動などを促進して、社員の水保全教育などにも力を入れている。大気汚染に対する取り組みとして、一切化石燃料を使わず天然ガスを使用することや、ライオン株式会社と協働して輸送の効率化を図っている。

『ビスコトップ開発』

花王は、高機能特殊増粘剤「ビスコトップ」を開発し、水辺の環境を汚染することなく、優れた高粘性の注入材やコンクリートを得ることに成功した。これは、河川や水辺で行われる工事の際に、水に分散しない、水中不分離性を付与したものであり、地下水の水質汚染を防ぐことができる。ビスコトップは、福島第一原子力発電のトレンチ内の高濃度汚染水を除去する工事にも使用されている。

[出典:花王 Kirei Lifestyle Plan Progress Report 2021 より]

社会 (Social)

Kirei Lifestyleで掲げた、「快適な暮らしを自分らしく送るために」「思いやりのある選択を社会のために」を社会面の目標とし、アクションをとっている。「QOLの向上」の実現を目指す上では、女性の社会進出を支援するためのピンクリボン活動、女性を支援する団体への寄付、家事の手間を省く商品の開発をしている。「清潔で健やかな習慣」では、月経教育・衛星環境向上に向けて日本国内に加え、月経知識の普及が進んでいないインドネシアでの「月経衛生管理プロジェクト」の支援や、ウガンダの国内ナプキン生産・販売を目指す若手社会起業家が立ち上げる「エコスマート」の支援をしている。花王グループは、女性が継続的に生理用ナプキンを使用でき、男女ともに今日遺棄を受けられる社会の実現を目指し、これからも支援を行なっていく。また、「Kirei Lifestyle」を体現するパーパスドリブンブランドとして、「MyKirei by KAO」をアメリカで、「athletia(アスレティア)」を日本で販売することを可能にしている。前者においては、環境負荷が少なく、誰にでも使いやすいユニークな商品であることがパーパスであり、後者は、「アクティブに生きるすべての人へ。年齢や性別に縛られないこと。ゆらいでももとに戻れるしなやかさを持つこと。動と静のバランスをコントロールすること」を基本コンセプトとしている。

『ユニバーサルデザイン』

花王は、化粧品や、洗剤、シャンプー、リンス、ボディーソープなどの容器におけるデザインに対し、ユニバーサルデザインの意識を高く示している。これは、目が見えない人利用者に限らず、お年寄りや、子供、体が不自由な方々といった、全ての利用者の目線からデザインの試行錯誤を行なっている。これらの中には、触覚識別表示を採用した容器の製作や、素早く残さず詰め替えることができるパッケージ、片手で食器洗いができる洗剤、また洗うことが楽しくなる洗顔料など様々なものがある。触覚識別表示に関しては、1991年に花王が市場へと発信したのをきっかけに、消費者の混乱を避けるために業界全体への働きかけを行った。2011年には日本の提案によりISO、国際規格の事例として掲載された。

[出典:花王HP UDの取り組みの歴史]

ガバナンス (Governance)

花王のコーポレートガバンナスは、変化に迅速に対応し、効率的、健全且つ公正である透明性の高い経営を目指すとともに、企業価値の増大も図るため、経営体制および内部統制システムを整備・運用し、必要な施策を適時に実施し、説明責任を果たしていくことを取り組みの基本としている。花王のコーポレートガバナンスの特徴としてあげられるのは、社員一人一人が、互いに対する敬意と公正さで接し法と論理に従って行動をする、という正道を歩むことや、事業環境や、社会の変化に対応すること、持続性に欠かせないESGビジョンを忘れずに掲げること、監査機能を適正に発揮し、多様なスキルを取り入れた社外役員の活用、そして、内部統制委員会を中心としてコンプライアンスやリスクに対して横断的な議論を行うグループ全体の内部統制の強化である。

[出典:花王 HP 「正道を歩む」 より]

『取締役会の実効性を高めるための施策』

取締役会の役割・責務である業務執行の監督と意思決定を正確に且つ効率的に行うため、花王グループでは様々な施策を実行している。それらの一環として、月に1回行われる取締役会前の情報提供、月3〜4回開かれる、執行の最高意思決定機関である経営会議へ出席することで執行の重要課題や、その議論の状況を、議長が直接入手できる場を設けている。他にも、年1回の実施にとどまるものの、事業場を視察することや、社外取締役の研究発表会への出席などもあり、社内の活動に対する理解を深め、取締役会での議論を深めている。

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