日本タバコ産業 ESGの取り組み

概要

タバコ事業をはじめとして、医薬事業や加工食品事業などにも幅広く進出する日本タバコ産業株式会社(JT)。サステイナブルな経営を中核と考える同グループは、経営理念に「4Sモデル」の追求を掲げている。このモデルは顧客を中心に、他3つのステークホルダー、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元のバランス力で満足度を高めていくものである。2015年には、サステイナビリティ戦略の策定に向けて社内外のステークホルダーとのヒアリングを通して、始めてグループ共通のマテリアリティの選定を行った。そのうち、より注力すべき課題としてフォーカスした項目が、環境と人財、そして労働安全衛生が挙げられている。そしてそれぞれの事業におけるサステナビリティ戦略の目標を掲げ取り組みを行なっている。JTグループでは、グループとしての3つの基盤を設けており、「人権の尊重」「環境負担の軽減(社会的責任の発揮)」「良質なガバナンスと事業規範の実現」としている。

環境(Environment

JTグループは、2030年度までに達成すべき課題を制定した「JTグループ環境計画2030」を基本に、重点的な取り組み領域に「エネルギー・温室効果ガス」「自然資源」「廃棄物」を設けた。それぞれの項目において、2030年、または2050年までの目標などが挙げられているが、2020年時点で、過去と比較した進歩が見られている。例としては、海外タバコ事業の使用電43%を購入や自家発電などの再生可能エネルギーで賄っていることや、水資源の削減は2015年比15%まで削減し、タバコ事業における廃棄物に関しては、タバコの包装材の見直しや、資源の再利用、廃棄物の適切な廃棄方法などを導入したことで廃棄料を2015年比で14%削減している。

『マナーの取り組み(タバコポイ捨て)』

日本国内のみならず、海外でもタバコ事業を行うJTグループは、喫煙者に対するマナーに対して、意識改革などのキャンペーンを国内外で行っている。日本では、「拾えば街が好きになる運動」を2004年から開始し、拾うことを通じて捨てない気持ちを育てるため、様々なボランティアが自治体と実行委員、協働団体とともにゴミ拾いをする活動を行なっている。これまでの開催回数は2000回以上にもおよび、参加者数は190万人にもなっている。

[出典:JT HP 環境と私たちの製品 より]

さらに、ドイツやイギリス、スイスでも携帯灰皿の推進や、パッケージの改善による環境負担軽減キャンペーンを行なっている。スイスでは、ポイ捨てに取り組む「市民アンバサダー」というキャンペーンが実施されており、携帯用灰皿の利用促進を図るキャンペーンを行い、多くの人にポイ捨ての問題と、廃棄物や利用可能な資源の正しい取り扱い方について教育をしている。

社会 (Social)

社会面におけるJTグループの3つの柱は「人財マネジメント」「人権尊重」「社会的責任」であり、JTが行う全ての事業においてそれぞれの項目に対する目標の設定がされている。コロナ感染症が拡大していることで、今まで以上に柔軟で、効率的な人財マネジメント戦略が需要を増す中、オンライン研修の導入、子育て介護などの休職手当、グローバル人財の育成、そしてZ世代への情報発信などが社会面の取り組みの一環として挙げられる。また、社会的責任を果たすために同グループでは、社員の社会参促進の制度として、ボランティア休暇や、骨髄バンクの登録や検査、ドナー休暇制度や青年海外協力隊参加休職制度などもある。

『女性活躍推進』

JTでは、ジェンダーに関する取り組みが多くされてきた。これらの中には、業務分担の最適化を図ること、キャリアアップのための社外研修プログラム、採用面接官の多様性重視、最終面接受験可能者数の平等化、などがある。さらに、女性従業員がキャリアアップできるように、1年間トップマネジメントがサポートするスポンサーシップポログラムも導入している。2018年には、男女の賃金の公正さが認定され、EQUAL-SALARY Foundationからタバコ事業本社に「Gender Pay Equality」が寄与され、性別に関係なく社員が活躍し、社内での推進活動やコミュニケーションを積極的に行なっている。

[出典:JT HPJTグループの人財マネジメント より]

ガバナンス (Governance)

[出典:JT 統合報告書 2021 より]
JTグループは、コーポレート・ガバナンスの強化が中長期に渡る企業利益の持続性と企業価値の向上につながると考え、4Sモデルを追求するとともに、経済や社会全体の発展に貢献することを掲げたコーポレート・ガバナンス体制が敷かれている。同グループは監査機能の強化と経営の透明性を図ることを考えた社会取締役制度を導入している。また、監査役会設置会社とすることで、客観性と中立性を確保した経営の監督機能を強化している。取締役員会では、15名以内の取締りのうち、2名以上を独立社外取締役としている。2020年度の会議は13回行われ、役員の参加率は100%であった。また他の、人事・報酬諮問委員会、監査役会においても、役員の出席率は100%である。

『サクセッションプランニング』

将来の経営を担う次世代人財の継続的な排出と候補者の質量と量的拡充は、グローバルベースで活躍することを可能にするためにも、企業の重要課題である。そのため、社長を筆頭に経営陣自らが候補者人財を選出し、外部機関の意見を踏まえた客観的な評価と経営陣と定期的な議論の上で、育成計画が作成され、多様で挑戦的な経験から育成をしている。具体的な取り組みの一環として「Next Leader Program」は、2013年から開始され、内・外部のセスメントを組み合わせた選出が行われ、数年間、成長支援が行われる。これらの取り組みは若者層から経営人財プールを拡充させることが期待され、人財の競争力強化も見込まれている。

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