概要
大丸や松坂屋などといった百貨店事業やPARCOなどのショッピングセンターの展開を手がける、J.フロントリテイリング(JFR)は、人、地域、環境とともにという3つのカテゴリーからさらに7つのマテリアリティーを設け、グループのビジョンである「Well-Being Life」の実現に取り組んでいる。このマテリアリティーを中心に、ESG経営の枠組みを位置づけ、「リスク低減」と「事業機会の創出」の両面にアプローチしている。7つのマテリアリティーは、それぞれ、お客様の健康・安全・安心な暮らしの実現/ ダイバーシティー&インクルージョンの推進、ワーク・ライフインテグレーションの実現/ 地域社会との共生/ サプライチェーン全体のマネジメント/ サーキュラーエコノミーの推進/ 脱炭素社会の実現である。『持続的な社会とくらしのあたらしい幸せの実現』に向けて、環境、社会、ガバナンスに対してそれぞれのビションを掲げた取り組みがされている。
環境(Environment)
JFRグループは、次世代に繋がる地球環境の貢献において「再生可能エネルギー」、「省エネ」による“脱炭素社会の実現”を目指している。ここで掲げる目標としては、2030年に、60%の二酸化炭素排出量の削減(2017年比)、事業活動の電力60%を再生可能エネルギー化する、そして再生可能エネルギーの自家発電自家消費を目指す、などが挙げられている。さらに、資源や製品における価値の最大化を求め、「リニア・エコノミー」から「サーキュラーエコノミー」の転換を図る。
『再生可能エネルギーの転換』
低炭素社会に向けて、2019年に新設された、大丸心斎橋店新館と、東京都江東区にある本社ビルで使用する電力を100%、再生可能エネルギーへの切り替えを可能にし、調子PARCOや池袋PARCOの一部でも切り替えを行なっている。環境に配慮した次世代型ビル—新生渋谷PARCOにおいては、デジタルコミュニケーションによるエネルギーの効率的利用の促進の取り組みが評価され、「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」として国土交通省より採択されている。同社は、温室効果ガス排出の大半が電力の使用である現状を踏まえ、LEDや、太陽光パネルの導入、自主運行車439台のうち、111台をEV車に転換するなどの取り組みも行っている。
『AnotherADdress』
株式会社大丸百貨店は、2021年にサブスクリプション事業となる『AnotherADdess』の立ち上げに成功した。サービスの内容としては、利用者が、月に洗練されたブランドの中から3着レンタルできるようになっている。大丸松坂屋が主体事業者となり、利用者からの注文を受けて独自のサステイナブルな取り組みをする3PL事業者、配送車、クリーニング事業者、リサイクル事業者とのパートナーシップで成り立つ。これは、大量生産〜消費、廃棄といったリニアな経済から脱却するとともに、変わりゆく消費行動への対応、また、従業員の活躍機会の創出などを目指した活動の一環である。
社会 (Social)
JFRグループは、グループで働く従業員の多様な働き方の実現や、健康と人権の尊重に取り組みながら、全てのステークホルダーの豊かな生活に貢献し、社会の一員として信頼される会社を目指している。同社が取り組む主な活動に、店舗と街づくりが一体化した「暮らしの楽しさの実現」の融合をはかることや、法令や社会規範を遵守し、高い倫理観に基づいた、人権など社会的責任に配慮した事業活動、ワークライフバランスの推進などがある。同社は、「ハラスメント防止対策委員会」、「内部通報制度認証(自己適合登録制度)」を設置し、多様な人財を尊重し、社員一人ひとりが、最大限の能力を発揮できるようにしている。
『地域活性化への貢献』
JFRグループは全国各地に店舗を有する特徴を活かし、地域のコミュニティ、行政、NGO・NPOとともに、店舗を基点として、地域資産をいかした持続可能な街づくりに貢献している。また、地域の魅力を発掘・発信することで、地域の活性化の推進にも力を入れている。具体的な取り組みとして、大丸百貨店『Think Local』による地産地消が挙げられる。2020年の9月に、コロナによって影響を受けた地域の企業、施設や団体に対する支援として、各地の名産品をオンライン販売し、店舗のある地域のNPOなどに寄付できるデジタルチャリティーなどを行った。さらに、パルコは、日本最大級のクラウドファンディング・プラットフォームとの共同企画『BOOSTER』を通して、東日本大震災で被害を受けながらも前進し、乗り越えてきた東北6県における伝統工芸品や地域産品の職人や企業を応援する取り組みを実施している。
ガバナンス (Governance)
同社のコーポレートガバナンスの体制は、監督機能と執行機能の分離を図るとともに、業務執行における権限や責任の明確化などが可能な、指名委員会等設置会社を採用している。取締役会の構成は、女性2名を含む社外取締役6名と、企業務執行の議長を含む社内取締役6名である。将来的に企業を持続的に成長させるために、同社は来の財務的な戦略・指標に加え、非財務的な取り組みの強化を推進している。
『スキルマトリックス』
JFRグループは、取締役候補において、事業経営に関する重点分野における経験と知見を有する人財を選任するため、ボードダイバーシティを意識した取締役会の構成に取り組み、取締役会のほゆうするスキル、期待するスキルを可視化して公開している。