富士フィルム ESG経営

概要

富士フイルムは2030年度を目標にした「Sustainable Value Plan 2030」を掲げ、CSRにも力を入れている企業である。コロナ禍においても、自社独自の製品技術で、PCR検査試薬の迅速な供給や、感染防止製品などの開発により、ヘルスケアの分野では特に社会に貢献している。

ESG経営については、特に環境分野に力を入れて取り組みを行なっている。パリ協定が目指す脱酸素社会実現に向けて、「エネルギー戦略推進委員会」などの設置を可能にし、同社のエネルギー利用や効率の向上に励んでいる。社会分野においては、多様な従業員が活躍できる仕組みや職場作りに励んでいる。ガバナンスの面では、同社グループの持続的な成長と企業価値の向上、社会の持続的発展への貢献のための基盤として、コーポレートガバナンスのガイドラインを社会の変化やニーズに応じて改定し、公表している。

環境 (Environment)

「Sustainable Value Plan 2030」(SVP2030)の重要課題とされている、4つのカテゴリーは健康、生活、働き方に加えて環境も含まれる。SVP2030は、2030年をゴールにした長期達成目標の策定である。この環境面では気候変動への対応、資源循環の促進、脱炭素社会の実現に向けたエネルギー問題、製品、化学物質の安全確保が主な懸念課題として挙げられている。それぞれ、様々な指標が定められているが、カーボンニュートラルの実現や、化学物質の安全管理による取り組みが多い。

『バイオ医薬品』

富士フイルムグループは、バイオ医薬品の開発、製造受託を行っていて、その中核を担うFUJIFILM  Diosynth Biotechnologyは、英国、米国、デンマーク、計4拠点を有する。今後もさらなる市場成長が見込まれることから、 2021年には、米国のノースカロライナに新たに大型製造拠点を増設された。最大の需要地であるアメリカにおいて、現地での原薬製造、製剤、包装そして輸送を手がけることで、環境負担が、欧州製造教典を介したモデルよりも少なくなっている。さらに、当拠点では、太陽光発電などの、再生可能エネルギーの利用や、地元政府や企業との連携による環境負担低減に取り組んでいる。さらに、富士フイルムグループでは、医薬品や化粧品用途のペプチドの開発・製造受託を受けていて、独自の合成プロセスによって、発がん性や、生殖毒性のある溶媒の使用を回避することを可能にし、新たな医薬品や整体材料等の開発に貢献している。

[出典:富士フイルムホールディングス CSR活動報告 より]

社会 (Social)

富士フイルムグループが社会面において取り組んでいることは大きく2つに分けられる。「ダイバーシティの尊重と推進」と「差別の禁止」である。「Value From Innovation」をコーポレートスローガンに掲げる同グループは、変化が厳しい事業環境においても変革に挑戦し、価値の創出を実現するため、個人の人格と個性を尊重し、受入、刺激し合う強い組織を目指している。そのため、国籍、年齢、性別、性的指向、人種、民族、宗教、政治的信念、思想信条、出身、障がいのいずれにも左右されない平等な採用、昇進や、処遇、教育機会などを与える社内の仕組みやルール作りと運用に取り組んでいる。

『多様な従業員従業員が活躍する状況』

  1. 優秀な外国人社員の登用

グローバルビジネスの成長に勢いをつけるために、富士フイルムグループの基幹ポスト(主要子会社の社長、主要事業の事業部長など)における外国人の比率を2030年までに35%を目指している。2020年度の実績は27%にとどまった。

  1. 女性の活躍促進

[出典:FUJIFILM Manufacturing Europe B.V. Newsより]
 

富士フイルムグループの全社における優秀な女性の役職への登用を促進し、将来の候補になり得る女性従業員の採用の強化を図る。2020年時点では世界の富士フイルムグループの役職者に占める女性の比率は15.4%に留まっているが、2030年には25%を目指している。また国内の同グループに占める女性の比率は、2020年では5.8%であるが、2030年には15%を目標にしている。

  1. 法定以上の障がい者雇用の維持(日本国内)

国内富士フイルムグループでは2016年から継続して法定以上の障がい社雇用率を達成して、今後も法定以上の雇用率の維持を目標としている。2020年度は2.48%であるのに対し、2030年度の目標は、法定雇用率(2.35%)を上回る雇用率を目標にしている。

ガバナンス (Governance)

誠実かつ公正な事業活動を通じて、同グループの持続的な成長と企業価値の向上、社会の持続的発展への貢献を実現するため、富士フイルムグループは、コーポレートガバナンスを経営上の重要な課題と捉えている。同社において、取締役会は、グループ経営の基本方針と、戦略の決定、重要な業務執行に関わる事項の決定、業務執行の監督を行う機関と位置付けている。

『コーポレートガバナンス 体制』

[出典:富士フイルムホールディングス HP サステナビリティレポート2021 マネジメント編 より]

同社は、内部監査、監査役監査、及び独立監査人による合計監査の相互連隊による監査体制を取り入れている。取締役会の構成は、独立社外取締役が4名、社内取締役が女性1名を含む7名で成り立っている。監査役員は、独立社外監査役が2名、常勤監査が2名であり、指名報酬委員会は独立社外取締役2名と社内取締役1名で構成されている。それぞれ、独立社外取締役はステークホルダーの利益に配慮し、取締役会の意思決定とその過程の合理性を判断、検証することで、取締役の意思決定の妥当性、適正性の確保に貢献する役割を担っている。

『顧客対応マネジメント』

「顧客満足」を企業理念とする富士フイルムグループは、最高品質の製品、サービスの提供を目指すために、顧客との接点である窓口におけるコミュニケーションを丁寧かつ、迅速、新設、適切、公平を基本にした対応をもとに、業務プロセスや製品開発の改善につながる体制を構築している。ヘルスケアにおける事業では、公正な競争に基づく営業活動のため、日本医療機器産業連合会などの業界団体が定める公式なガイドラインに従っている。そして、社会からの幅広い理解を得るため、資金提供元などの定期開示に取り組んでいる。

ニュースレター登録:最新のESG情報をいち早くお届け!