概要
大和ハウス工業グループは「世の中の役に立つ事業の推進」という、創業者精神に加え、長期的視点で目指す姿「人が心豊かに社会の実現」に向かって持続的な企業価値向上を果たそうとしている。また、経営ビジョンとして、『「人・街・暮らしの価値共創グループ」としてお客様とともに新たな価値を創り、活かし、高め、人が心豊かに生きる社会の実現』を目指している。ESG経営については、環境面での取り組みに力を入れ、環境負担をゼロにする取り組みをする一方で、脱炭素への取り組みを事業拡大のチャンスとし、事業を通じた環境への貢献を行う。また、ESGそれぞれの分野において目標を決め、長期的な目線で、社会の課題解決と、持続的な成長を目指している。コロナ禍という困難に直面したことで、大和ハウス工業は様々な変革にも乗り出した。その一環として、DXの進出による、建設現場の無人化、省力化を目指した三次元でのデジタルモデル化、テレワークの実施、また多様な働き方を推進できる仕組みづくり、そして「共に生きる」という創業者精神の強化である。
環境 (Environment)
大和ハウスグループは、創立100周年という節目を迎える2055年を見据えて、”Challenge ZERO 2055” という環境長期ビジョンを2016年に策定をしている。サステナブルな社会の実現を目指したこのビジョンの中では4つの環境重要テーマがあげられ、環境負担のゼロ化に挑戦する。その4つの項目は、気候変動の緩和と適応、自然環境との調和、資源循環、商品・サービスである。さらにそこから7つの「チャレンジ・ゼロ」を設定し、CO2の排出量ネットゼロや、天然資源の破壊、水リスクのゼロなどがあり、2030年までのマイルストーンとして環境ビジョンの明確化を図っている。
特に、脱炭素における取り組みは、同グループの最大の課題であり、施設などの建築を手がける事業による活動と商品やサービスによる省エネ、再生エネルギーの提供による活動がある。環境に配慮をした商品の中には電力を自給できるオフィスや、地域の人々や子供たちと生物多様性に関する教育を行うなどがあげられる。さらに、ソーラーシェアリングという新たな事業に挑戦し、耕作放棄地を、再生可能エネルギーと農地を融合させることに成功した。これには様々なアクターが協働し成し遂げられたものであり、高齢化や、地域活性化などの社会課題の解決などにも貢献することを可能にした。
『緑豊かなコミュニティを育む街』
大和ハウス工業グループは環境におけるサステナビリティに貢献する活動の一環として「環境共生先導都市」のモデルに基づいて、埼玉県越谷市に「レイクタウン美環の杜」という分譲住宅地の整備を2008年完成させた。越谷は、水田都市であった一方で、洪水に悩まされることから、治水対策として約40haという調節池が設置されたり、自然の力を活用するパッシブデザインを取り入れ、多くの緑が植えられたりしている。建設から10年以上も経て緑豊かに成熟した街では、近所の住人どうしの交流が活性化するとともに、鳥谷、昆虫、植物などの生物が育まれている。これは、この街の至る所に小動物がこのむ蛇籠や小鳥が水を求めてやってくるバードバスなどの設置によるもので、寿機なども、冬の時期には歯を落とし、堆肥として若い植物を育てるなど、生態系のサイクルが充実している。
社会 (Social)
ダイワハウスグループは「人・街・暮らしの価値競争グループとして、5つの視点でステークホルダー(お客様、株主、取引先、従業員、地域市民)との接点を強化し、事業を通じて社会に貢献する」ことを社会性長期ビジョンとして定めた。同グループは、企業理念として「企業の前進は、先ず従業員の生活環境の確立に直結すること」を掲げており、従業員に対して、安全、健康的に働くことを可能にするため、働き方の改革に進んで取り組んでいる。さらに、ビジネスパートナーである取引先との関係も、自由な市場の競争原理に従って業界全体の健全な発展を目指し、適切な関係を保ち、優越的な地位の利用を禁止するなど厳しく取り締まっている。地域社会との関わりは、同グループにとって大切なステークホルダーとの活動である。地域共生活動の分野として3つ揚げられるのは、「次世代育成」、「環境保全」、「福祉支援」であり、活動理念である「大いなる和を持った地域共生活動」を取り入れている。
『Talk, Share, Actのダイバーシティ&インクルージョン』
不確実で複雑化した今日の社会に生きるためには、「多様な視点」と「異なる価値観」を大切にし、変化への適応力を高めることが求められると考えている大和ハウスグループは、多様性の一つである女性の活躍推進をダイバーシティ推進の試金石として様々な取り組みをしている。
女性促進に対しての活動では、管理職研修、職域拡大に向けた、営業サポートや両立サポート、積極採用などに力を入れている。能力開発についての取り組みも、共働きが多い地域において、子育てをしながら働く事務系職種の女性が中心となり家族のシェアをテーマにした住宅の企画〜イベントの実施までを行う活動も取り入れている。グループでの取り組みとしては、2014年からグループ合同で女性活躍推進を目的としたフォーラム「D’s Diversity Forum」を2017年からは「D’Diversity Forum」に名称を変更しダイバーシティ経営や働き方革命との関係について講演や意見交換を行う取り組みがなされている。
ガバナンス (Governance)
大和ハウス工業のガバナンス体制は、社会に信頼される企業であり続けるため、株主の権利を尊重し経営の公平性・透明性を確保するとともに、経営ビジョンを具現化するためにコーポレートガバナンスを経営上の重要課題と位置づけ適確かつ迅速な意思決定・業務執行体制ならびに適正な監督・監視体制の構築を図っている。
取締役会による経営監督の実効性と意思決定の透明性を一層向上させることを目的として、「社外役員の独立性判断基準」を満たす独立性・中立性のある社外取締役を2名以上置いている。監査役会設置会社として、また、報酬に係る機能の独立性・客観性を強化するため、取締役会の諮問機関として指名諮問委員会と報酬諮問委員会を設置している。ビジョンと戦略などを議論するコーポレートガバナンス委員会を設置している。
『持続的な企業価値向上に向けて』
同グループは、株主から提供された資金に対する期待収益率を上回るリターンを獲得することにより、企業価値を創造している。無形資産を含めた本源的企業価値について検証し、同社が持つ潜在的且つ持続的なキャッシュフロー獲得能力としての本源的価値の健全な成長に努めている。